雨鳥インタビュー完全版『第1回コミック大賞』大賞受賞『むこうがわのまさか』連載中 雨鳥インタビュー完全版
雨鳥プロフィール
誕生日:1月29日
出身:茨城県
漫画歴:10年くらい
好きな漫画:ゲゲゲの鬼太郎
好きな漫画家:水木しげる
趣味:妖怪研究

第1回のコミック大賞で、見事大賞を受賞! 「ライバル」6月号から「むこうがわのまさか」の連載を開始した雨鳥さんへのインタビュー(6月号に掲載)を転載します。雑誌掲載時にはスペースの都合で載せられなかった部分も含めた完全版です! どんな人が大賞をとったのか? 早速ご覧ください。

――ペンネームの由来は何ですか。

妖怪の名前です。小さい頃から妖怪が好きだったんですが、小学校のとき読んだ「幻獣辞典」という本に、「雨鳥」という中国の妖怪が載っていたんです。字面が気に入ったので、それを使っています。

――漫画家を志したきっかけは何だったんですか?

『ゲゲゲの鬼太郎』ですね。高校生のとき、美術の先生に見せてもらった『ゲゲゲの鬼太郎』がきっかけです。それまでアニメを見たことはあったのですが、原作を読んだことはありませんでした。読んだとき、ものすごい衝撃を受けて。こんな漫画見たことない、これが目指すべきものだ! と思いました。それまでも絵描きにはなりたかったのですが、『鬼太郎』を読んだとき、漫画家になりたい、という方向性が決まりました。

雨鳥さんの銅版画。
雨鳥さんの銅版画。すでに怪しい雰囲気が漂っています。

――それからはずっと絵の勉強をされてきたんですね。

高校卒業後は、美大に進学しました。専攻は油絵だったのですが、銅版画の授業があって、そこで描きこむということの楽しさに目覚めました。漫画でもこんな描きこみをしたいな、と思って。

――雨鳥先生の「描きこみ」のバックグラウンドのひとつは、銅版画だったんですね。描きこみと言えば、雨鳥先生の特徴として、あまりスクリーントーンを使わないことがあげられると思うのですが、これは最初からそうだったのですか?

使ってみたこともあるのですが、結局使わなくなりました。

――なぜスクリーントーンを使わないのですか。

水木しげる先生が使ってないからです(笑)トーンを使わなくても、ここまで描けるんだ、と思って。

――なるほど。さて、ここらへんで大賞受賞作「むこうがわのまさか」についてお聞きしたいと思うのですが、「むこうがわのまさか」を描くとき、どのようなことに一番気をつけて描きましたか。

「かっこよさ」です。戦いをいかにかっこよくするか、というのを意識して描きました。それまであまり意識しなかったので、他の漫画を読んだり、映画の1シーンでかっこいい、と思ったところを思い出したりして、「かっこよさ」って何だ!? とものすごく考えました。とにかくもう、家にある漫画をひっくり返して読んだりして。

――「かっこよさ」というのは、水木先生とは少し違った特徴ですよね。

「かっこよさ」に関しては、他のものを参考にして描きました。

――言ってみれば、「水木先生を踏まえて、そこにかっこよさを加える」というのは、雨鳥さんのオリジナリティの部分になっているんですね。

そうなっているといいのですが。

――主人公の「真逆 / イッポンダタラ」というキャラクターは、どのようにしてでてきたものなのでしょうか。

まずイッポンダタラを思いつきました。最初に顔のあたりを考えて。布袋から目が出ている、というようなイメージで、このキャラクターを鍛冶屋のキャラクターにしよう、と決めた後、あとからハンマーやハサミを加えていきました。

――人間のキャラクター、「真逆」くんはあとから考えたんですね。

そこはとても時間がかかりました。最後の最後まで決まらなかったんです。見た目の個性を出すのがまず大変で、性格やしゃべり方も悩んで。今の形になるまでに随分色んな事を試しました。最初はもっと普通の口調だったし、もっと江戸っ子みたいなしゃべり方だったこともあるんです(笑)。いろいろ試した結果がこれなんです。

――キャラクターが、この話の一番難しいところだったんですね。

そうですね。その部分と、さっきも言いましたが、キメの部分をいかにかっこよくするかに、最後まで悩みました。

愛用の文房具類。
愛用の文房具類。
ペン軸はデビュー以来同じものを使っているとか。

――そうして苦労して考えたネームをもとに下書きをして、実際にペン入れをするとき、気をつけていたことは何ですか。

それまでの自分の作品では、細い線で描くことが多かったのですが、今回は太くて迫力のある線を心がけました。太く、力強く、と描いていたのですが、やりすぎてペンを折ってしまいました(笑)。でもそのおかげで、迫力は出たと思います。

――出来上がった原稿を、そのときはどう思いましたか。

今までで一番の出来になったな、と思いました。ようやく自分の妖怪を生み出せたな、という気がしたので。

――投稿して、選考の間、どんな気持ちで結果を待っていましたか。

総応募数が368本とも聞いていたので不安でいっぱいでした。多すぎるよ、と。自分は早期応募特待生ではなかったですし。

――最終結果はどのように知ったのですか。

編集者の方からの電話で知ったのですが、その時自分はうたたねしていて。「大賞になりました」と言われて、そのときは「はい、ありがとうございます」と答えたんですけど、電話を切った後、あれ? これは夢? と思って(笑)。夢だったらどうしよう、としばらくそわそわしていました。改めて「大賞って何がついてくるんだっけ、あ、連載確定だ!」とか調べて、余計にうろたえたり(笑)。

――最終結果の講評はごらんになりましたか?

はい。描きこみが自分の作品や、その雰囲気を作っている、というような講評を頂いて、それがすごくうれしかったです。独自性についても認めてもらえましたし。

――受賞式はどうでしたか。

緊張して、あまり何があったか覚えてないんです(笑)。森川先生から「これはいけるよ!」と声をかけていただいたのがうれしかったのと同時に、責任持って頑張らねば、と思いました。森川先生はみんなに同じこと言ってたそうですけど(笑)。

――大賞は連載確定ですが、自分の連載がはじまる。それについてはどうおもいましたか。

また描いてもいいんだ!「まさか」のことをもっと描けるんだ! と思うとうれしかったです。同時に、これが多くの人の目に触れるんだ、という責任も感じました。

――連載に際して、気をつけたことはなんですか。

もっと面白いものを! ということですね。読み切りのときより、広がりのある設定を心がけて、キャラクターについてもつめていきました。

これが証拠画像だ。妖怪の仕業…!?
左:これが証拠画像だ。妖怪の仕業…!? 右:こちらが左右正しいバージョン

――考えすぎて、失敗もしてしまったとか。

そうなんです。どうやったらもっと面白くなるだろう、と考えすぎてしまって、注意が散漫になって、キャラクターの右手と左手が入れ替わってしまったんです。右がハンマーで左がはさみなんですけど、それが逆になってて。しかも頻繁に(笑)。

――毎月の連載、というのは大変ですか。

厳しいですね。でも厳しくないといけないと思っています。今は1か月丸々使ってしまうので、もっと早くできるようにしていきたいです。

――アシスタントもほとんど使ってないんですよね。

描き込みの中に自分らしさがあると思うので、ほぼひとりで描いてます。描くのは楽しいのですが、大変です。

――連載作「むこうがわのまさか」の注目ポイントについて教えてください。

今まで見たことない妖怪が描けたと思っています。そこを見て欲しいです。

ライバルと言って思い浮かぶもの
ライバルと言って思い浮かぶもの